False Island (通称偽島)のEno.1127 ルフィナの裏の人の雑記や日記のアーカイブなどをだらだらと

2010

0704
目覚めた時には空は紅く染まっていた。自分でも気付かないほどに相当疲れていたんだと思う。
重たい身体を起こして、服を着て、自分の部屋のドアを開ける。食堂への階段を下りていくと、既にたくさんの客で賑わっていた。

テーブルとテーブル。飲み客の合間をカウンターの連翹のところまで抜けていく。そのカウンター席に座っているのは一人だけだったが、その後姿は見慣れた影だった。金髪のセミロングに同色の大きめの猫の耳と猫の尻尾。楽しそうにゆらゆらと動いて連翹と話をしている獣人の子が一人。
「ラスじゃないか」
近くまで言って、後から声をかける。
「あ、ルフィナ。待ってたんだよ」
呼ばれてラスはくるりと振り返る。ぱぁっとおひさまが咲いたように笑顔を向けた。
「おはよう紅榴。体調はどう?」
「ん。ぼちぼち、だな。動けなくはないよ」
気がついた連翹も少し心配そうな顔で尋ねてきたので、あたしもそれに答える。そう言いながらラスの隣のカウンター席を引いて横に座った。連翹が慣れた手つきでチェイサーの水を差し出す。
「ラス君、紅榴が起きるまでずっと待ってたのよ~?」
連翹の言葉に、あたしは出されたチェイサーに口付けながらラスへと視線を向ける。ラスは嬉しそうな笑顔そのままで、コクコクとうなづいた。猫耳が上へピンと張り、かすかに動く。
「うん、そうなの。今夜、お祭りがあるから、良ければルフィナと一緒に行きたいなぁと思って」
ゆらゆらと尻尾を揺らしながら、可愛いことを言う。
「んーそうか。嬉しいこと言うなぁ。んじゃぁ行ってみるか?あたしも祭りは好きだし」
誘われたことが嬉しくて、あたしはラスの頭を髪型を崩さないように優しく撫でた。
「良かった!じゃあ、用意してくるから日が沈んだら広場の噴水のところで待っててなの!」
そう言ってラスは、すごく嬉しそうに微笑むと、椅子から身軽に飛び降りて店のドアを潜り抜けて行った。日が沈んだら、なんて曖昧な。既に沈みかけてる紅い空をラスが開けたドアから眺めながら、あたしはその背中を見送った。ラスが去ったあと、カウンター席に残ったあたし一人。竜眼が召喚しただろうインプのウェイターに注文数分のお酒を渡した連翹が、小さく溜息をついてこちらに向き直る。
「・・・・・一階の部屋の気配が消えたみたいだが、チェスカの方はどうなった?」
少し声のトーンを落としてあたしは彼女に尋ねた。途端に連翹の顔が曇る。しばしの沈黙のあと、グラスを手にとって磨きあげながら連翹が答えた。
「うん・・・・紅榴が部屋に入って少しくらいした後かな?訪ねてきたタイミングで引き渡したよ」
「そうか」
チェイサーのグラスを少し傾けて、あたしは溜息をついて相槌を打つ。氷がグラスに当たってカランと音を鳴らした。仕方の無いこととは言え、少しだけ悪いことをしたような気持ちになる。チェスカは頑なに話そうとはしなかったが、あの脳みそお子様貴族が家出してまで島に来たくらいなのだから、何かしら出た理由があったのかもしれない。
(まぁ、捜索願いを出すくらい心配してたんだろうし・・・・・・これで良かったんだよな、きっと)
グラスの氷をぼーっと眺めながらそんなことを思う。あんな奴でも、煩いのが居なくなるとほんのちょっぴりは寂しく思えるから不思議だ。
「ただね」
しばらく黙っていた連翹が急に口を開いたので、あたしはグラスに向けていた視線を連翹の方へと持ち上げた。
首をかしげて、彼女へ先を促す。
「あの派遣されてきたギルド員さん・・・・・紅榴は会ってないから知らないと思うんだけどね」
「あぁ・・・・ごめん。正直、本気で体調悪くて寝たからな・・・・何かあったのか?」
あたしは連翹と竜眼にバツ悪く思いながら頬を掻いて尋ねた。磨き終わったグラスをスタンドに掛けながら、嫌そうな、困ったような、寂しいような、不安なような、よく判らない表情をする。
「んー・・・・すごくね、感じが悪かったのよ。竜眼なんか相当ストレス溜まったみたいで、チェスカ君が彼らと出て行ったあとにボソッと、『その届け物が終わったら、適当な依頼でミスでもして死んでしまえ』とか呟いたの。普段、そういう感情はあまり表には出さないイメージだったんだけど・・・・初めて聞いたわ。竜眼が依頼人にあんな事言うの」
「腹の中では思ってても口にはなかなか出さないようにしてるからなぁ、あいつ。漏らしたってことはかなり酷かったんだろうな」
「酷いって言うか・・・・私から見ても、本当にこの人達が派遣員で大丈夫なのか心配になるくらい。詳しくは竜眼から聞いてくれればいいと思う。
でもそうね・・・・・一言で表すなら」
「表すなら?」
「下衆だったわ」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
ちょっと酷いような輩でもあまり気に留めない連翹がここまで言うってことは予想以上と見て間違いなさそうで。
ますます竜眼と連翹に頭が上がらない気持ちであたしは生返事しか出来なかった。
「ちなみに竜眼は?」
恐る恐る尋ねる。
「ここ数日、その人たちの所為で不眠症だったみたいで・・・・今日はもう寝てるわ」
大きく溜息をついて連翹が答えた。
あたしは、後ほどやってくる竜眼の文句タイムが容易に想像出来て、嫌そうな顔で額を抑える。竜眼がダウンしてくれてるのは、ラスとの件もあるので助かると言えば助かるのだが・・・・・竜眼にはかなりの負担をかけたのは間違いない。
「後でなんかしらお礼しないとなぁ」
誰に言うでもなく、呟いた。
「ところで・・・・時間大丈夫なの?だいぶ日も落ちてきたみたいだけど」
連翹が窓の外を眺めながら首をかしげた。気がつけば紅かった空も紫が濃くなり始めていて、あたしは慌てて席を立ちあがる。
「空見るの忘れてた。竜眼も寝てるみたいだし、ちょっと付き合ってくるわ」
残っていたチェイサーを一気に飲み干して空のグラスを彼女に渡すと、あたしはBARのドアを押して外に出た。
少し長話をしてしまった。もしかしたら既に待っているかもしれない。
(仕方ない・・・・近道していくか)
待ち合わせの場所までへの最短距離。林の間をするりと抜けて走っていく。途中、少し開けた場所に湖があった。そこに見慣れた紫の影がひとつ。
「ひひゃああああああ!こんな人気のないところにわざわざ来てくれるなんてきっと運命だよね!ルフィナさんのその気持ち受け取ったよ!!さぁ僕とめくるめく大人のじかn」
「急いでるんだ。邪魔しないでくれるか」

ゴスッ!!

身の危険を感じたので、言い終わる前にとりあえず沈めておいた。これ以上被害が起きないように適当なロープで手早く且つ的確にみの虫にして木に吊りあげる。おとものネズミが彼のロープを齧り切ろうとしてたので、とりあえずネズミも一緒に縛りあげておいた。
変なところで時間を食ってしまったので、先ほどよりもペースを上げて走る。そんなあたしの横をいくつかの小さな光が横切っていった。その湖が、その光の主が、祭りのメインだということをあたしが知るのはそれから少し後のこと。
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自己紹介:
False IslandのEno.1127 ルフィナの裏の人。
9月26日生まれの天秤座のO型。耳かきをこよなく愛する海洋生物。マイペースで気分屋な風来坊。お酒好きだが煙草は苦手。

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